この話題を提供するには、まだ少し早いかな?っと思って、ずっと温めていたエントリーなのですが、僕の予想を上回るスピードで変遷が進んできているので、3回ほどに分けて少しジェネラリストについて触れたいと思います。
※海外でジェネラリストというと、日本のように一人で全部やる人というよりは、一人で複数の工程をこなす人という印象が強いです。もちろん、最初から最後までできる人も居ますが、そういう人は日本のように多くはいません。ジェネラリスト=複数工程できる人という認識です。
(以下文面にはかなり主観的な意見も反映されておりますので、ご容赦ください。)
ここ1年ほどで、海外スタジオでもジェネラリストの募集、採用が急激に増えてきました。
(特に実写を扱うライブアクション系のスタジオにこの傾向が見られるような気がします。)
これにはいくつか理由があると思うのですが、一つはコストの削減です。
どうしても分業制を用いた作業の場合、それぞれのデパートメントの作業が終わると、次のプロジェクトまで、手空きのアーティストが出てきます。昔はプロジェクトが途切れることがなく仕事を確保し続けられていたので、分業制の方がより効率的にハイクオリティな物が作れていました。
ところが、昨今ではプロジェクトの確保がままならず、1つのプロジェクトを終えて、次のプロジェクトまで数ヶ月空くというケースも珍しくありません。
そうするとスタジオ側は手空きの仕事がないアーティストにもお金を支払う必要が出てきます。
そこでスタジオ側はプロジェクト毎にアーティストを雇ったり、減らしたり、デパートメントごとに管理する必要がありました。
ところが、ジェネラリストを採用することで、モデリング→テクスチャー→ルックデブ→ライティング、レンダリング、コンポなどを一人で全行程(もしくは複数行程)をこなせる人を雇うことで無駄を無くそうと試みているのです。
もう一つの理由がパイプラインの普及、ワークフローの確立による作業フローの簡略化の影響です。
実写映画を取り扱うスタジオでは過去のノウハウ(特にアセットのライブラリ化など)を蓄積することで、最初から全てをモデリングしたり、テクスチャーを描いたりする必要が少なくなりました。
キャラクターを作成する場合も、ヒーローキャラクター以外はライブラリ化されたアセットを組み合わせることで、簡単に何人ものバリエーションを作ることが出来ます。
実写映画の場合、過去のアセットをライブラリから持ってきて、それを手直しする。もしくはモデリングも3Dスキャンされた物をトレースするような作業が増えたため、ハイスキルなコストが高いモデラー、テクスチャーアーティストを雇うよりも、そこそこのクオリティで色々なことができるジェネラリストの方がスタジオ的には都合が良いのです。
新しい新規のハイクオリティなアセットを作る必要があるのは、ヒーローアセットのみになりつつあり、今までのように多くの人員を雇わなくても、少数でこなせることが増えてきたためです。
その他にも理由はいくつかあると思いますが、大きな理由としてはコストを下げるためのジェネラリストの採用が各スタジオで増えています。
※これは既存の物を多く扱う実写映画ならではだと思います。アニメーションの場合は作品によりテイストが異なるので、アセット流用が難しいです。全て最初から作る必要があります。その為、アニメーションスタジオでは、分業制の方が効率が良く、ハイクオリティな物が逆に量産できるのです。その分、アニメーションスタジオでは人員も多く、制作期間も実写映画に比べて長いです。
ただ、現段階ではまだまだ分業制が主流なスタイルです。どこのスタジオも分業制をしいているスタジオが多いでし、スペシャリストの需要もまだまだあります。
またクオリティに関しても、残念ながらスペシャリストが作成したアセットとジェネラリストが作成したアセットでは大きな差があります。
例えば、イラストや実在しないもを2Dから3Dおこす作業などは、モデリングの技量というか、センスに差が大きく出ます。また、複雑なものをモデリングする際、綺麗なトポロジーを作る際にも、作業スピードなどにもジェネラリストとスペシャリストで差が出ます。
しかし、徐々にツールが発達してきて、技術や知識が普及してくれば、この差はあっという間に縮まると思います。
これはスタジオにも言えることです。現に今までトップだったスタジオと新興勢力のスタジオで、クオリティにほとんど差がなくなってきました。
アーティスト的には、今後はVFX先進国の西欧人とVFX後進国のアジア人との差も縮まってくるでしょう。
※ここでいうコストとは制作費、人件費だけではなく、時間短縮という意味合いも含みます。
ってことで、本日はここまで。
次回も引き続きジェネラリストについて触れていきたいと思います。