本日は仕事の合間に少しずつ読み進めてたボーンデジタル出版の” ゲーム・映像制作 パイプライン構築マニュアル"を読了したので、発売前ですが書評を兼ねた感想を紹介させて頂きます。
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ゲーム・映像制作 パイプライン構築マニュアル
これは私が知る限り、世界で初めて(?)パイプライン構築について書かれた書籍だと思います。目次を見てみましょう。
1章 はじめに
2章 制作のステージ
3章 映画のアセット作成
4章 ゲームのアセット作成
5章 パイプラインの基本機能
6章 システム インフラストラクチャー
7章 スタジオ環境のためのソフトウェア
8章 データ管理の詳細
9章 アセット管理
10章 制作管理
10a章 色と音
11章 すべてをまとめる
12章 今後の傾向と技術
用語集
目次を見て頂いても分かると思いますが、パイプラインとはどういう物か?どういうメリットがあるのか?構築、運営していく上での注意点などが、丁寧に説明、解説されています。
構成に関しては、映画、VFXとゲーム(実機)のパイプラインの違いを比較しながら、話を進めているので、映像系、VFXスタジオのエンジニア、アーティストでも読むことができますし、ゲーム系開発者、エンジニア、アーティストでも読めるような構成になっています。
私自身は実機(リアルタイム)をメインとしたスタジオでゲーム開発をしたことがないので、映像系のパイプラインとゲーム系にパイプラインを比較された時に、いまいちピンッとこない部分が多かったのですが、これは逆の立場でも同じかもしれません。
私自身は映像系、VFX系のパイプラインにフォーカスして話をさせて頂きますが、少々内容はシニア向けと言いますか、実際にそれなりの規模のパイプラインを構築しているスタジオでの勤務経験がないと、内容を100%理解するのは難しいかもしれません。私自身、職種で言えばアーティストですので、エンジニアリングなどの部分では専門ではありませんので、理解しきれていない部分もありました。
それでも本書はパイプライン構築の目的、構築時の注意点、構築の必要性、メリット、問題が起こる原因などを細かく丁寧に解説されています。パイプラインがどいうものか?というのを知らない人、これからパイプラインを構築、整備しようと考えているスタジオ、既に自社パイプラインを持っているスタジオなどでも読んで損はしない内容だと思います。
ただ、何度も言うようですが内容が難しい(細かく書かれている)ので、パイプラインなどに興味がないアーティストには不向きな書籍だと言えるかもしれません。本当はアーティスト自身がパイプラインの構築、運用について知っておくべき内容が随所に書かれているので、対象を限定するのは非常に難しいですが。。。。
私自身はパイプリアン、アセット運用、カラーマネージメントなども含めて、非常に興味がある分野でしたので、本当に読み応えのある一冊でした。
(図解がそれほど多くなく、文章での解説がほとんどです。ページ数、本編だけだと280ページほどですが、読み応えとしては倍のページ数の本を読んでる印象すらしました。それほど文字が多い書籍です。)
ただ、本書の最後に用語解説も付属していますので、わからない言葉や名前が出てきても、用語解説を利用すれば、簡易的にではありますが説明されています。その辺は非常におかったと思います。
あえて本書の欠点というか内容に対して問題を提示するとすれば、本書で紹介された内容はあくまでもマニュアルであり、具体的にどうすればパイプラインを作れるか?という部分に触れられていません。またパイプライン構築にあたり、R&D部門なども含めて、エンジニア、TA、TDなどの開発力がある前提で話が進められていますし、紹介事例でも大手スタジオであったり、基本的にはそれなりの規模を有するワールドスタンダード的なパイプライン紹介なので、これらの内容がどこまで国内のスタジオにフィットするのか?という疑問はのこりますが、実際に海外のスタジオがどういうスタンスでパイプラインを構築し、運用し、どういった問題を抱えているのか?部分的にではありますが理解するこはできると思います。
解が示されていないのもスタジオにより求めるパイプラインの規模、スケールが異なるため、単純にパイプラインはこうやって作るんですよ!という説明ができません。むしろパイプラインはその会社、スタジオの文化として、それぞれにあった物を作るように書かれています。この辺は、実際に経験してみないとわからない部分なので、理解は難しいかもしれませんが、そういう部分も踏まえて、あくまでもマニュアルであり、この本書を購入すれば、パイプラインが作れるという類の書籍ではないことはご理解いただく必要があるかと思います。
また12章では、今後使用されるであろう新しい技術やソフトウェア、映像、ゲームにおけるクラウドサービスの運用などについても予想されていて、非常に興味深く本書を読む事ができました。
それでは私自身が本書を読んで、押さえておきたいポイントを何点か本書内容を引用して紹介したいと思います。
<以下引用>
1章 はじめに
1.3 パイプリアンとは?より
パイプラインは制作に携わる各アーティストの仕事を結びつける接着剤である。
1.4 映画とゲームのパイプラインの違いと類似より
映画のパイプラインは膨大な量のデータに対処できるだけでなく、それを柔軟に行えることが不可欠である。
2章 制作のステージ
2.6 プリプロダクション:概要より
プリプロダクションはぷろjけうとのプラインニングフェーズで、その後すべての基礎となる。
2.10 映画のパイプラインの制作より
パイプライン開発者の最も一般的な3つの作業は、バグ修正、新しいワークフロー機能の追加、既存ワークフロー機能の最適化である。
~中略~
最適かも重要で、特にツールが予想よりも遅かったり、予期したよりも多くのショットで使う必要がある場合は重要である。
~中略~
最適化と自動化はパイプライン構造を変えないので、アセットを出来る限り効率よく押し出すのにも役立つ。
3章 映画のアセット作成
3.4 モデリングより
モデラーはオブジュエクトの形を正確に再現するだけでなく、そのトポロジーが正しいことも保障しなければならない。これはメッシュを構築するポリゴンがジオメトリの”流れ”に従い、それらが適切なサイズと形状であることが含まれる。
~中略~
一般にはモデラーはポリゴンの「密度」がメッシュのサーフェースでほぼ均一になり、モデルが大部分あるいは完全に四角辺のポリゴン(「クアッド」)で構成されるようにする。不均等なサイズのポリゴンや、5つ以上の辺を持つポリオゴンを含むメッシュは、サーフェーステクスチャーの歪みの原因となったり、アニメーションで奇妙に変形することがある。
5章 パイプラインの基本機能
5.3 なぜパイプラインは変化するかより
パイプラインが変化するのは、一つには技術が変化するからである。新しい技術は新種のデータを意味し、その作成手法を制作の途中で、既存のパイプラインにに押し込まなければならない。
5.4目標を定義するより
プロジェクトの大きさは?
プロジェクトのサイズと複雑さには大きな違いがあり、それに必要なパイプラインもそれに応じて変わる。長いスケジュールの大きなプロジェクトの方がカスタム技術に投資することに意味がある。
5.9 ディレクトリ構造
5.10 ファイル0名規約
ディレクトリー構造の決定だけでなく、ファイルとフォルダの命名規約を定めることに重要である。記述的なファイルシステムが極めて重要である。
~中略~
しかし、自動化された命名システムは人的エラーに弱い。
~中略~
命名規約に置かれる重要性は、その規約を強制するツールを提供する意欲と相関したものでなければならない。
7章 スタジオ環境のためのソフトウェア
7.3 作るか、買うか、改造するか
7.4 ソフトウェアの購入:考慮すべき点
8章 ディレクトリ構造:
フラットな構造 VS ディープ構造
新しいプロジェクトを始める時には、最初からディレクトリ構造を計画することが重要である。
~中略~
むしろ、効率的なディレクトリーシステムの設定はアートに属する。
8.4 映画のディレクー構造
ディレクトリーの命名規約はスタジオにより異なる。
10章 制作管理
10.11 色と音
ワークフローにおける色管理
色管理システム
ACESシステム
色の将来
などなど、ここで紹介した物は私が付箋、アンダーラインとつけた極一部でしかない。
今回のエントリーが本書、購入の際の参考になれば幸いです。
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