2013年2月13日水曜日

【CG】現在のCG業界について自分なりに考えてみる

本来なインタビュー総括を予定していましたが、今回はR&Hの倒産、ドリームワークス
のレイオフなど、近年、業界全体の急激な変化が起こっています。今回のエントリーでは業界全体の動向について、自分なりの考えを整理したいと思います。

※今回のエントリーはあくまでも、僕の主観的な考察、考えを整理したものであり、必ずしも僕の見解が、業界全体の変化を正しく表現されたものではないことをご理解ください。

【R&H社倒産について】
まずR&H社の倒産について。これは先日CH11を申請したDigital Domain(以下DD)やDisnyに売却されたLucasFilmGroupとは状況が異なります。
DDの倒産は本来の業務とは別の部分が原因での倒産のため、運営、経営する部分に責任が起因しての倒産ということが推測できます。またLucasFilmに関しても、業績悪化による売却、買収という訳ではないので、R&H社の塲合とは大きく異なります。

それでは今回のR&H社の倒産は何を意味するのか?R&H社は純粋にVFXの受注を行なうことで経営を行なってきた会社の一つです。添符したDEMOREELを見て頂いてもわかると思いますが、R&H社のVFXのレベルは世界でもTOPクラスのスタジオです。経営に関しても、毎年コンスタントに映画の受注に成功していました。そんなR&H社の倒産が何を意味するのか?

 Rhythm and Hues Studios - Demo Reel 2012

これはあくまでも、僕個人の見解ですが、FVXの純粋な受注(税制優遇によるタックスオフセットが無い場合、他からの制作費、資本援助がない場合)だけでは、スタジオが経営を維持出来ない事を意味していると思います。
現在、多くのプロダクションでは税制優遇による資本援助(一部制作費を国が負担する形で)を受けてプロダクション経営、仕事の受注が成り立っています。
僕が現在勤務しているDoubleNegativeも例外ではありません。イギリス政府からの税制優遇を背景に、イギリス係プロダクションは仕事の受注に成功しています。
もちろん制作を依頼する製作会社、配給元も税制優遇をすでに予算に組み込んでいます。


【税制優遇について】
税制優遇は代表的な国で言えば、ニュージーランド、オーストラリ、イギリス、バンクーバー、シンガポールなど、タックスオフセットの%は違えど、多くの国で実施されています。ある国でも制作費の3割から4割を負担する国もあります。しかし、この税制優遇は未来永劫続かないと僕は考えています。

現在、税制優遇を背景に制作コストをどこまで下げられるか?という各国プロダクションのチキンレースが続いています。制作費を下げないと、仕事の受注すら困難な状態です。したがって、R&Hの様に堅実な経営をしていても、制作費を下げざるを得ないというのが現状でしょう。言うなれば、仕事をすればするほど赤字が出るよいう訳です。しかし、仕事を受注しないと収入を得られない→制作費を下げて仕事を受注→結果、採算が取れずに経営悪化という悪循環が続いているのだと推測できます。

現にカナダのBC州では税制優遇を行うことで、去年は大きな赤字を計上してしまいました。そのため、BC州では映画産業への税制優遇を縮小、廃止するか?という議論が上がってきています。それに対してSaveBCと言うように、税制優遇を継続して欲しいというアーティストの署名活動も行われています。即廃止という訳ではないでしょうが、本来、税制優遇の目的は映画を誘致することで、州や自国に雇用や外資を産み、産業を発展させるのが目的の一つです。しかし、産業が発展しても、州や国の財政を赤字にしてしまい、財政っを今後も圧迫し続けるのであれば、長くは続けることはできないでしょう。そういう意味で、税制優遇は未来永劫続かないでしょう。


【アメリカについて】
アメリカ本土については、僕自身、就労したことがないので、詳しい状況、詳細は情報集した結果から、推測するしかありませんが、僕が考えていた以上に深刻な状態にあるように思います。元々、数年前からアウトソースが主流となり、大小含めて多くのスタジオが閉鎖を余儀なくされました。

今回のDWのレイオフ、R&H社の倒産に伴い、少なからず僕の友人の幾人か(日本人、外国人含め)が職を突然失いました。アメリカで長年働いていた幾人かの友人は、アメリカを離れ他国へ行くことを決断しました。

今後のアメリカについては予想するのが非常に難しいですが、税制優遇の有無に関わらず、海外の諸外国でも同じクオリティの物が作れると解った以上、アウトソースの流れは変わらないと予想されます。

R&Hの倒産以前の中小プロダクションの閉鎖に見られるように、アメリカ本土でのVFX産業はすでにビジネスとして破綻していると推測されます。非常に悲しくも厳しいですが、現実として受け止めざるをえません。


【諸外国プロダクションの動向】
先ほど紹介した国々とは別にドイツやフランス、ブルガリア、ハンガリーなどでもVFX、CM、ゲームシネマティクスなどが制作されています。現在では税制優遇の恩恵でイギリス、バンクーバーに仕事が集まっている感じはありますが、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、インドなど、アジア、オセアニアでもハリウッド映画は制作されています。しかし各国のプロダクションも仕事を獲得するのは非常に困難だと聞いています。今後はインドや中国、タイ、フィリピン、マレーシア、台湾、香港などでも、今まで以上にハリウッド映画が制作され、価格競争がより熾烈を極める可能もあります。(すでに制作されている。。。)

今やハリウッド映画は世界中で制作されています。アウトソースの理由の多くがコスト削減、税制優遇を背景にした撮影、プロダクション誘致の結果だとおもいますが、その税制優遇が今後も未来永劫続くとは限りません。税制優遇というシステムにも徐々に綻びが見え始めてきました。

税制優遇が無くなれば、多くのプロダクションは仕事を失うでしょう。私が勤務しているDnegも例外ではないと思います。しかし、今後も税制優遇を宛にしたチキンレースを続ければ、遅かれ早かれプロダクション経営は破綻すると予想されます。


【日本のプロダクション事情】
僕自身、日本を離れてすでに4年が経過しているので、どこまで正確に日本のプロダクション事情について把握できているか解りませんが、自分なりに整理してみたいと思います。

日本ではGAMEシネマティクスチームを自社に持つスクエニ以外では、ゲームメーカーでの映像制作は非常に困難な状況にあり、多くが国内外のプロダクションにアウトソースされているのが現状だと思います。
映像関係に関しては、PPI、DF、OLM、SOLA DIGITALなどが海外市場をターゲットに入れたコンテンツ制作、受注制作を行っているように思います。
また白組のように国内のみをターゲットとしたコンテンツの制作を行っているプロダクションも存在します。

業界全体の流れとしては、海外市場をターゲットとしたプロダクションでは、積極的に海外のフロー、パイプライン、情報、知識、技術を取り入れようと、外国人の採用も積極的(?)に行なっているように思えます。
おそらく海外からの帰国して、日本で働こうと考えている海外在留アーティストの方はこういったプロダクションが勤めやすく、海外での経験を還元しやすいのでは!?と考えてはいますが。。。。。
しかしながら、日本のCGプロダクションの多くは遊戯関係のCGを制作することで経営が成り立っているプロダクションも多く、海外就労経験しかない日本人アーティストが、そういった仕事やオーガナイズされていないプロダクションフローに馴染めるか?という問題点も多々あると思います。

かなり長くなってしまいましたが、本日は以上です。自分なりに現在のCG業界について整理してみました。

次回エントリーでは、 将来(今後)のCG業界について、自分なりの考えをまとめていければっと思っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿