さて、前回のShader Typeについてのエントリから随分と時間が経過してしまいましたが、今回は前回の続きで、なぜ物理ベースのShaderが良く使用されるのか?
なぜ、物理ベースである必要があるのか?を僕の見解と経験を交えて紹介して行きたいと思います。そして、最後に物理ベースの理詰めな絵作りの限界についても紹介したいと思います。
1.なぜ物理ベースのshaderが良く私用されるのか?なぜ、物理ベースである必要があるのか?
これは多くのCGを用いる映画の大半が実写合成で成り立っているからです。
答えが”実写”にある以上、物理的に詰めていくのが最も早く簡単に答えにたどり着く方法だからです。
そして、前回のエントリでも述べましたが、物理ベースなshaderを使用することで、専門的な知識や技術がなくても
ある程度はShader側で自動的にフォローしてくれて、ユーザーフレンドリーであると言うことです。
海外で活躍するシニア以上のアーティストは、当たり前のようにこれらの知識を持っています。
しかし、ミドル(レギュラー)以下のアーティストに関しては、かなり知識や技術に個人差があります。
そういった人たちのバラつき、クオリティの差というのを平らにする、統一するという意味でも、物理ベースのshaderというのは、非常に有効な手段です。
色々な決まりごとを決める事でアーティストの自由度を制限する反面、クオリティの統一、バラつきをなくすと言うのは、大きなプロジェクト(映画規模、TVシリーズ)などでは非常に有効です。
デメリットとしては、良くも悪くも誰がやっても同じようなクオリティになってしまうということです。
(ここでいうクオリティの差というのはテクスチャの上手い、下手という差だけになってしまいます。)
2.物理ベースの理詰めな絵作りの限界について
クオリティの統一、バラつきをなくすという意味で、物理ベースなshaderというのは非常に有効な手段であるということを説明しましたが、これだけでは絵作りという部分では不十分です。
僕が考えるリアルな絵というのは、ある一定の光(光源)に対して、どれだけ物理的に正確な値を返すか?というのが僕の中のリアルな絵。
しかし、多くの人がリアルと感じている映画での実写合成や僕が携わった”Legend of the Guardians”に関しては、僕が言うリアルとは少々異なります。
なぜなら、映画などに見るCGは、よりリアルに見せるために嘘をついたアンリアルな絵だからです。
例えば、テクスチャーにしても、ただ実写リファレンスを真似るだけではなく、よりリアルに見せるために嘘をつきます。
汚しや焦げ目、油汚れなど、実際には汚れないであろう箇所に、焦げ目や汚しを入れることで、グッとしまった説得力のある絵になります。
しかし、それらはただの思いつきで加えられるのではなく、実写やリファレンスに基づいた嘘だということです。
また、shaderに関して物理的に設定していても、ライティングやコンプの段階で、演出的な意図から
Reflectionを強めたり、Diffuseを弱めたりします。全体の露出を絞ったり。これらの作業は、絵をよりリアルに見せるための嘘です。
また、いくらSurfacerやShaderWriterが物理的に正解だと言っても、ディレクターやスパーバイザーが駄目だといえば、いくらリアルな絵でも駄目だという事です。
なので、あくまでも物理ベースな考え方やshaderというのは、答えを導きだすための一つの方法ではありますが
それ自体が答えではないという事です。ま~、例によって全て私見なので、違った考え方、意見を持ている方は多いと思いますが。
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