2014年12月28日日曜日

【CG】 帰国して感じたこと、、、モデラーとしての役割とアート、デザインの重要性

さてさて、いよいよ今年も残すところあと数日となってしまいましたね。11月末に帰国して、ここ1ヶ月ほどで、幸運にも色々な学校や色々な現場の方々とお話する機会を得る事が出来ました。本当に感謝しています。そして、そういった方々と特にお話をさせて頂いて感じたことを少しだけまとめたいと思います。


以前から薄々感じていたことですが、帰国して多くの方とお話をさせて頂いて確信に変わりました。

私自身、ブログやSNSを通じて、ワークフローやパイプライン、モデリングのHOW TOなどに関して、色々な情報を発信させて頂いていまが、私がブログで紹介していることが「解」だと思われている方が非常に多かったという事です。

これに関しては、私自身にも大きな責任があるのですが、私がここまでブログで述べてきたことの多くが「解」ではなく、多くが一つの例(ヒント)にしか過ぎません。「解」を導き出すための例(ヒント)として、私自身は情報を発信させて頂いていったのですが、私が紹介することを全て正しい「解」だというふうに認識されている事が非情に多く、正直、私自身も少し驚いています。これは私の伝え方にも問題があったと思います。

例えば、私が良く口をすっぱくするほど、紹介しているトポロジーやデータの正確性の話などは、モデリングの本質ではなく、あくまでも基本であり、モデラーであれば知っていて当たり前のことであり、しっかりと気を使う部分であるということです。それは決してアピールポイントではなく、モデラーであれば基本中の基本です。

モデラーの本質はアート的、デザイン的にかっこいい、見栄えのするモデルをモデリングする事が本質(真理)としてあるはずなんですが、そこを取り違えてしまい、デザインやシルエットの前に、トポロジー形成を優先させている。それをアピールポイントとして考えてしまっているモデラー(特に若い学生、経験が浅いモデラーに多い傾向)が非常に多いと感じました。また、色々な方とお話をさせて頂いて、モデリングアーティストではなく、モデリングオペレーターが増えつつあることに、私自身は非常に危機感を感じました。

本来、モデラーは与えられた情報(コンセプトアートやデザイン画、プロット)などから、情報を読み解き、ニーズにあったモデリングを行うというのが本来の形です。全ての情報がそろった状態(細かいデザイン画や詳細なリファレンス写真、三面図などなど)で、モデリングを開始できるプロジェクトなどほとんどありません。存在しない情報をどう読み解き保管するか?というのがモデラーの役割として非常に重要です。その上で、データの正確性、トポロジーの形成などテクノロジーとしての知識や技術も求められます。

映画の仕事に関しても、特に実写系VFXなどはフル3DCGアニメーションに比べて、与えられる情報も少なく、ショット毎のコンセプトアートがあれば良い方です。

そういった限られた情報を元にモデルを完成させるのが、モデラー本来の役割だと私は思っています。そして私の知る限り、そういったアート、デザイン能力に長けたモデラーというのは国内には多かったという印象ですし、かっこいい独創的なキャラクターや背景を作る能力はあったけど、テクノロジー、データの正確性に欠けるというのが、日本人モデラーの印象だと、私は個人的に感じていました。

だからこそ、国内で足りないテクノロジー(ワークフローやパイプライン、マネージメントの題材含む)の部分を伝えたい、学んでほしいという意図もあり、テクノロジー中心のエントリーが多いのですが。。。。そこは、上手く伝えられなかった私の責任でもあると深く反省する部分でもあります。。。。

私自身は「正しい解」を得るよりも「正しい解」にたどり着くためのプロセスが最も重要だと思っています。リアルなキャラクターを作るために、どうすればリアルになるのか?説得力ある背景を作るためには、どういう意図を持ったデザインにするのか?どういったトポロジー形成にするのがベストか?常に正しい解を導き出すために試行錯誤する事で多くの失敗や成功を体験できます。
はじめから正しい解だけを与えられると、何が駄目で何が良い事か?判断する能力が伸びません。結果的に視野も狭くなってしまいます。また「正しい解」というのは、個人やプロダクション、プロジェクトにより異なります。だからこそ、その正しい解にたどり着くためのプロセス(常に試行錯誤を繰り返す事)が重要なのだと私は過去の経験から学びました。

私自身、そういう意図を自分なりに皆さんに上手く伝える事ができていないという確信を、ここ1ヵ月程で得たので、今回はこういったエントリーを書くことを決めました。

今後も私のスタンスは変わりません。常に自分で良い思ったこと、正しいと思った事、間違っているっと思ったこと、悪いっと思った事も同様に情報として発信し続けるつもりです。ただ、私が紹介することの多くがヒントでありほんの一例にすぎません。必ずしも個人やスタジオ、プロダクションにとっての正しい「解」ではないという事はご理解下さい。


年の瀬に話題としてはあまり相応しい話題ではなかったかもしれませんが。。。私自身も新年を気持ちよく向かえ、新しい挑戦に専念するためにも、今年感じたことは今年のうちに!!!文章として残したかったので、ご容赦下さい。

それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。そして、新年からも「北田栄二の武者修行」をよろしくお願い致します。

北田 栄二

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